その最期

今日はわたしも1日オフ。父母も在宅。

早く起こす必要がないので8時過ぎに朝食を作る。

リビングのベッドでボーっと天井を見てる父。2階から起きてこない母。 

 

放置すると昼夜の感覚がなくなる。

ゆえに、叱咤激励あの手この手で母を起こしリハパン交換。階下に来て朝食を食べるように指示。

父も車椅子に移乗させ朝食は9時半。

 

再び2階に寝に行く母。ベッドで爆睡する父。

昼‥朝食を食べないわたしは昼食は食べる。

朝食食べただけで爆睡してる父母に食わせる必要はない。が、しかし放置すると時間感覚が‥

12時半頃3人分のピラフとスープを作り、朝と同じく母を叩き起こす。父を車椅子に移乗させ食卓に。

わたしが食べ終えた頃に母が降りてきた。

 

一口食べて辞める父の車椅子を押し、またベッドに戻す。

母はテレビを見てる。

「お母さん、今は昼間。昼ご飯食べて」母「うん」

動かない。母が食事を認識できるように、父の食べ残しはテーブルに残した。

 

1時間後に見に行くと変わらずテレビを見てる母。ベッドで爆睡する父。

手付かずの母の昼食と、一口食べて残した父の昼食はテーブルの上で乾いてる。

「お母さん、お昼いらないのね」

母「え、お昼‥?」

「朝ご飯食べてまた2階に寝に行ったよね。これは昼ごはん。今は昼の13時」

母の脳内から昼食のために起こされた記憶は消え、テーブル上の食事も認知できない。 

 

ご飯ご飯!お腹すいた!と騒ぐモードもあれば、出された食事を横にボーっとして食べないモードもある。最近、空腹満腹の認知もおかしい。

 

無理に食べさせるのもなーとピラフとスープを捨てる。

これ、1日3食いらなくないか??わたしの時間と食材だけが無駄に浪費されていく。でも食事で意識させないと時間の見当識‥以下同文

 

14時過ぎ、変わらずテレビを見てる母。

「パンツ替えるよ。2階行こうか」母「うん」

そろそろ漏れそうだからパンツ交換‥してる最中に大便排泄。慌ててリハパンで便を抑える。

「ちょ、お母さんこのパンツ抑えて!」

ふらつく母は大便しながら部屋で転倒する危険がある。箪笥に手を添え身体を支えさせ、反対の手で出てくる便を抑えたリハパンをキープさせる。

秒速で新聞紙を敷き、便を包んだリハパンを切ってまとめ母を座らす。その後、お尻拭きで尻を拭き新しいリハパン装着。

 

数々の修羅場を潜ってきたけど、リハパンを脱がすために寄せた顔の間近で、親がクソをひり出すのを見たのは衝撃だった。キツイ。

母のお腹がゴロゴロ言ってる。

「お腹痛いの?調子悪いの?」

母「全然。なんで?」けろっと答える母。

「今、パンツ替えてる中ウンコしたし、お腹ゴロゴロいってる」

母「えーお母さんウンコなんかしないわよー」

あなたが1分前に出した立派な便がここにありますが、もう記憶から消えてる。

 

便は下痢ではなかった。でもゴロゴロ言ってるのはなに。

「自分の体調不良すら自認できない」レベルの認知症だと、食欲と排泄で推測するしかない。

腹の調子が悪いのか。

腹の調子は悪くないけど、排便が認知できないだけなののか。

腹圧がかかると大小便垂れ流しになる頻度が急増している。昨日も入浴ヘルパーさんがリハパン履かせようとしたら大放水したらしい。

無理ですわこんなん。

 

夕方、夕食。

米を炊きおかずを作ってもまた廃棄かもしれない。面倒くさい。

天ぷらうどんを作り、朝昼と同じく母と父を起こす。

父は声をかけても起きない。放置すると夜中にまた騒ぎ出す可能性がある。

「起きろ!夜だよ今は夜!これは晩御飯!」

叩き起こして車椅子に移乗。母は食欲があるらしいがゴロゴロしてたから便失禁が心配。

 

「今は夜ね!これは晩のご飯!いいですか?夜!」

老齢だし、動いてないし、食べないなら食べないでいいんだよ。

ただ、時計を見ても、時間を教えても、窓の外の明暗を見ても、昼夜が認知できない父母に時間感覚を叩きこむ方法は、朝昼晩の食事以外思いつかない。

だが日に日に食卓召集かけるだけでも一仕事になってきた。

 

また一口で箸を置く父。

父「で、誰が迎えに来るって?」

「だから今は夜!誰も迎えにきません」

父の残したうどんを食べようとする母。

「やめ!お母さんお腹の調子が悪いかもしれないから!」

母「えーそんなことないわよ!なんでそんなこと言うの!」

「さっきパンツ替えてる間にウンコしたからだよ」

排泄失敗を責めたいわけじゃないんだけど、記憶維持が出来なさすぎて健康管理もできない。

 

また父をベッドに移し、食器を洗い、明日のディサービスの準備をリビングにセット。

「いいですか。今は日曜日の夜。明日は朝からディサービス。お風呂があります。準備はこれね」

母「あら、それお母さん初めてだわ」

3年通ってますがな。なんなら昨日も行きましたがな。

父「おい、いまはいつだ。俺の記憶がないぞ」

がっくり。

「今は日曜日の夜!さっき食べたのは晩飯!」

母「じゃあお母さん2階行って寝るね」

「待て待て、ソレは明日のディサービスに持って行くお風呂道具入ったバッグ!置いていけ」

わたしが2階から降ろし「明日の準備」と見せても、秒で忘れ、全てを自室にかき集める母。

母のパンツをまた交換。また便。

 

自宅にいると一時が万事こんな状態。

わたしが不在なら、父と母だけでは飯も食えない。排泄はリハパン内に溜まってるか、垂れ流しか。

 

‥今日の便、わたしが「パンツ替えるよ」と声をかけたタイミングが悪かったのか?

声をかけなければ、母は自分で便意を感じトイレに行けたのか??

わたしが仕事で不在中、あの立派な1本グソをリハパンに出したらどうなってた?

ウンコ溜めたまま過ごしたのか、パッドだけトイレに捨てまた詰まらせたのか、リハパンごと脱いでまた垂れ流しにしたのか?

日々、悪化してる母。どこに先手を打てばいいかも分からなくなりつつある。

 

自分で自分の状態を認知説明できない老人を予知予測し、先手を打ち回避できたり、覆されてガックリきたり。その繰り返しで毎日が成り立ってる。

もう飽き飽きだわ。

 

 

先日、在宅医に父の最期を訊いた。

アルツハイマーは歩くことも排泄も食べることも話すことも忘れ、寝たきりになり死ぬ。

レビー小体型認知症はパーキンソニズムが悪化し寝たきりに。最期は嚥下障害で死ぬ。

 

前頭側頭型認知症は?

医師「いやもうここまで来てれば差はないですよ。実質ほぼ寝たきりですし。最期は嚥下障害か、お父さん大便のトラブル多いから、尿路感染症か」

「尿路感染症!」

医師「だいたい、大腸菌が入って感染症になりますから」

ふーん。じゃあ母も充分やばいな。

 

このハイペースなら、半月後に排泄も食べることも忘れたり、嚥下障害になってもおかしくない。

 

口から入れる栄養と、下から出す排泄。

 

猫に対して最も気を使うのもこの2つだから分かるわ〜。

父の幻視妄想転倒、母の妄想作話徘徊も手を焼くが、排泄と食事に関わる不自由は生命に関わるからね。

 

もう脳内では逆算になってる。

家か、家ではない場所か、最期の場所をどこに想定するか。なにが必要でなにが不用か。

 

「尿路感染症になったら救急車ですか?在宅医療でいいですか?」

医師「うちで大丈夫ですよ。抗生剤入れて点滴‥でも娘さん、仕事してお母さんの介護して、この上お父さんの点滴管理できませんよね」

「兄弟が駆けつけて点滴管理するなら別ですが、わたし自身は出来ませんし、やる気もないです」

医師「だと看取りかなぁ」

「だと、下手に施設入れるより自宅で看取る方がいいですか?」

医師「いや、娘さんもういいですよ。感染症なるかも分かりませんし、もう施設でいいですよ」

なるほど。

 

やっぱり看取りまで対応してくれる施設に入れるのが1番だな!