昨日、寝かしつけ後に鼾をかいて寝てた母が、またガサガサしていた。
仕事場から駆け付けると、暗闇の中でベッドに座る母。
母「○○~(兄の名)?」
「いや、△(わたしの名)だよ」
母「あら、△だったのね。お母さんね、2階のおばあちゃんに話に行かなくちゃ」
「やだぁ。この家は○○(母の名)と△(わたしの名)2人暮らしだよ」
母「でも、おばあちゃんに相談があるの」
祖母のことを「お母さん」ではなく「おばあちゃん」と言うのは珍しい。ましてや「相談」とは…斬新。
認知症不穏は「不安にさせない」ように対処を心がける。
わたしも暗闇に座り込み「相談って何?」と話を聴き始めた。
途中から、動画を廻した。
亡くなった後「声が恋しくなる。写真だけじゃなく声を残しておけばよかった」とよく聴くから、機会があれば録りたいなと思ってた。
その程度だったんだけど、意外と含蓄深かった。今の状況の隠喩的というか…
以下、母の名○○。わたし△。
母「あれは…そんな重荷を背終わされるなんて、思わなかったでしょ」
「なに?なんの重荷?」
重荷と言えば、今のわたしにとっては父と母の介護は「背負わされてる感」があるけど。父の入所以降、それを口にしたことはない。
母「なんて言うんだろう。△が背負わされる重荷が、夢にも思わなかった…。△が、えーってびっくしちゃって、それを背負えなかった場合ね、あとは…」
「なにを背負うの?」
母「ね?わたしもよくわかんないんだけど」
「背負えるかどうかはほら、荷物を聴いてみないと」
母的に何をイメージしてるのか。父か?
母は元々「パパ(父)の介護する気満々」だった。まさか母の方が脳卒中で倒れるとは本人も無念だったろう。
または「おばあちゃん」が出てくるなら、祖母から母が受け継いだ土地や家の話なのか、そこに父母の介護も含めてるのか、まったく別の話なのか、聴いてみたかった。
「○○さんは、わたしに何を背負ってほしいの?」
母「男の子の、当然背負うものではないものを背負ってほしいの。女の子の背負う重荷をね、どんなものというというか言うと…」
「なんだろ?」母「なんだろ?」「聴きたいわ」
母「なんだろうな、背負ってみてこれは背負いたかったと思うようないいものではないのよ。それが」
「なんだろうな」
母「間違っても、背負わされちゃったら困るわって言う…」
母「それはなんなんだろうね」「なんだろうね」
「それを、おばあちゃんに相談したかったの?でも、この家は○○と△しかいないの。○○さんが背負えばいいんじゃないの?」
母「それはねぇ、背負えないの」「背負えないの?重いの?」
母「重いの。ちょっと重すぎるの。じゃないかなぁ~と思ってるの。…意外と身軽にね、あ、いいよいいよって言うかもしんないな」
「誰が?○○さんが?△が?」母「△が」「うん、そうだね」
母「ねぇ。だからいいか」
「背負う物が何か?は聴きたいけどね」
母「物はなんだろ?そういうことなんだから…うーん。この家にはいるはずだからっていうことなんだけど」
「え。物?いるものを背負うの?」母「いる人が背負うの」
「あ、いる人が背負うの?じゃあ○○さんか△しかいないねぇ。○○さんが背負わないならわたしが背負うよ」
ってか、とっくに全部背負ってる感があるけど…。不穏には安心を与えねばならない。
母「あ、申し訳ないねぇ。じゃあ何を背負うか、△の代理を務めるかもしれない。考えてもらおう」
「△の代理?」母「そう△の代理になる、彼女のね」
「お、登場人物増えた?」母「登場人物増えた…」
「この家、○○さんと△しかいないよ」
母「そう、もしね、わたしがどうしても出来なかったら…」
「〇〇さんが出来なかったら△がやるでしょうよ」
母「あ。そうそうそうそう。だからまぁ一応ね、やってもらえるかどうか…」
「やるよ」
母「じゃあ△の意見を聴いてみようと思うの」
「△はわたしよ」
母「そう、出来る、かもしれないからね」
「出来るじゃない。やるしかないならやるよ」
重い重い重圧を、わたしはもう背負い続けてるけども、母は心のどこかで未だ「自分がなんとかしなきゃいけない責任」を感じる部分が残ってたのかな。
普段の様子からは全く垣間見えないけど…。
母「あっ、じゃあ。でも、もしどうしてもそれは困った、それはやりたくないってことだったら考えるよ?一生懸命」
母のこういうところに、いつも泣ける。母はずっと一生懸命で努力家だった。もう頑張らなくていいよ。
脳卒中にさえならなければ、今頃わたしと「お父さんの面会行く~?」「ええ、せっかく旦那から自由になったのに?」なんて軽口叩いてたはず。
本人も父を介護し終え、残りはわたしと自由に過ごす老後を望んでたのになぁ。
「え、いいよ。そんなん考えるの大変じゃん。やるだけやってみるよ」
母「え~じゃあ、お母さんも気が楽になった!やるだけやってみる…」
「そらそうでしょ。2人しかいないんだから、やるだけやるよ。安心した?」
母「うん安心した。もし、どうしてもだめだったら、やめる…。なん、なにか、ママがどうしてもやることが出来るように努力してみる」
母は責任感が強すぎて、認知症になってしまったのではないか。そう思う片鱗を自宅でよく見つける。
「そうね。困ったときは少し手伝って。基本的にはわたしがやるから大丈夫」
母「じゃあお願いね。よかったぁ~」
「はい了解よ~。なんの心配もいらないでしょ」
母「ああ、そうだねぇ。ホントにそれを頼めたらママも助かっちゃうよ」
「それはよかった。頼まれてあげるから」
母「あ、そうか、ほーんとに頼める?いいかもしれない。もしかしてアレをやったおかげで、こういうことが出来るようになったってことがあるかもしれない」
「そうだね、多分、それはあるかもしれない」
オムツとか…排泄処理とか…もう動じないですし(笑)
いやそれだけじゃない。認知症介護で出来るようになったこと、沢山あるよ。
母「まぁ、とってもアテにしてやってもらうように、仕向けちゃうかもしれない」
「アテにしていいよ、それはわたしが任されるから安心して」
母「はいお願いします」
「はい、安心できたかな?」
母「出来たよ~!大安心だよそれは」
「じゃあ、そろそろちゃんと眠くなってきたかな?」
母「眠くなってきたかな~?」
「今、寝てる途中だからね」
母「ママも眠くなってきたぁ~」
「よかったわぁ~」
全部録画・録音できた。
先々、コレ聴いて号泣しそう。聴けないかもしれないから文字起こししておく。
※
と思った本日。
寝かしつけたら、また暗闇の中で隠喩的なことを言い出した。今日は録画しなかったけど。
母「大変なの。大変なことが」「なになに?」
母「ずぶずぶと沈んでる人がいるの」
父の体調のことかな??リクライニング式車椅子で沈んでいるように見えなくもない。
「誰?」「ほら、あれ、あの人…」「お父さん?」「違うの」
「じゃあいいじゃん。知らない人が沈んでても問題ないよ」
母「知らない人じゃないの。だから困るの」
ほぉほぉ。まぁとりあえず、安心させねば。
「沈んでる人がいても、本人はそれで満足してるかもしれないじゃん」
母「そう?そうなの?」
「本人が浮かぶ気になれば助けれらるけど、本人が沈んでてもいいやって思ってるなら、他人が出来ることはなにもないよ」
母「そうかしらねぇ。そうかもねぇ」
「その人は好きで沈んでるの。お母さんが心配してもしょうがないよ」
母「ならいいか。よかったぁ~」
この2日、母はなかなか意味深いことを言う。
元々、妙に予見的なことを言う人だから、後々「なるほど!」と合点出来る言葉になる気がする。
でもこれ、連日続いたらどうしよう。。。