これが徘徊か

母は午前中から、1階2階行き来して落ち着かなかった。

「今日は行く場所ない(ディが休み)よ」

と言うも、自分の服を1階リビングと2階自室で上げ下げしてる。

 

家事も趣味も出来ない、テレビも本も意味が分からない母の気を逸らすには外出しかないが、

「(父の調剤)薬局行くけど行く?」

と誘うも断られた。

 

昼食後。

服を両腕に抱えた母が家を出ようとした。

服を持って行く場所を探して彷徨いてたのか…。

「どこ行くの?」玄関で呼び止める。

母「違うの。行けって言われたの」

「どこに?」

母「わかんないけど、行くの」

「どこ行くかわからないなら、行けないでしょ」

なんとか丸め込み、2階自室に服を戻す。

「あなた朝飯食べて寝て、今昼ごはん食べたとこ。だから下でテレビ見れば?」

母「うん」

わたしはそのまま仕事場に戻る。

 

が、すぐさま小さな音がした。勘が働く。

仕事場玄関から外に出たら、更に大量の服を抱えた母が自宅玄関を出たところだった。

こっそり抜け出す頭はあるのか。

つか、わたしもよく気づいたな。耳が良いにもほどがある。

「どこ行くの?」

母「行けって言われたの」

「どこに?」

母「東京」

「ここが東京だよ。あんたそんな服抱えて行き先もないのに何してんの」

母「でも言われたから」

「誰に?」

母「ほら、あの人が電話してきて」

「さっきわたしは1階でテレビ見れば?と言ったよ。服抱えて外に行けとは言ってない。誰が電話してきたの?番号と名前教えて。場所わかれば送って行くから」

母「ほらあの人よ〜電話番号はわからないけど、一族が集まって暮らす場所に行くの」

こういうやりとりが延々続く。

 

パジャマ、カーディガン、タートルネック、ベスト…母の部屋にあるものをランダムに抱えてる。

10歩譲ってから手であれば…少し徘徊させた方が気が収まるのかも。

だが、手をつないでも転ぶ母。両手にこの量の服を抱えて歩くのは自殺行為。

まして、両手でランダムな服を抱えた、ヨチヨチ歩きの老婆って尋常じゃない。

もちろん道理の分かる状態ではないので、邪魔な服をその辺に放置…それが他人の家かもしれないし、自分の足元に服を落とし躓き転倒…の可能性も大。

 

強引に家に連れ戻した。

 

明後日からのショートスティが「どこかに行く」レベルで頭にはあるんだろう。

「3日から1週間のショートだよ」と言わなけりゃよかった?

でもショート慣れしてない今、騙し討ちで当日連行するより、しっかり予定を伝えた方が抵抗なくなるかな、とか。

1週間の期限を伝えない方が、滞在中に不安だよね、とか考えた末なんだけどね‥。

 

この徘徊が始まったのは月曜から。

月曜は父母が加入してた生保レディが来てた。

たまたま電話が来て、1年前の父の入院保険も請求できることが判明。その請求だ。

母はわたしが契約や難しい話をしてると席を外す。

一昨日も、リビングと自室を行き来し、

母「わたしはここにいてもいいの?」

「いいよ~座ってなよ」というも、すぐ2階に戻るを繰り返してた。

 

介護や医療の契約ごとは、基本本人同席(銀行・生保は言わずもがな)。

今までも、わたしが契約してる姿を見ると母は挙動不審になってた。

多分、母は家事や介護ではなく「小難しい契約やサインを担ってた自分」に自尊心や存在意義を感じてたっぽい。

役割ができない=家に居場所がない感があるのか。

月曜日、またその場面に直面したことと、近々また泊りに行かされるらしい情報がミックスしての徘徊かなぁ。

でもわたしにどうしろと。

 

 

今日の徘徊顛末は父も見ていた。

母の徘徊がヤバいことは理解してる。が、それでまた父が不穏になるループ。

「お父さんは気づかないだろうし、二重遭難になるだけだから考えないでいいよ!」

と言うしかない。

母が自宅にいたりわたしと外出してるのに、「ママがいない」と歩いて自宅を出て近隣に保護されてるんだから。

 

chika05.hatenablog.com

 

その後、自室で寝た母。

ここまで来ると1日寝てくれてた方が安心だが、夜また覚醒しそうで悩ましい。

 

その間、父はリハビリパンツ5枚交換して、車椅子とベッドを行き来しまくる。

リスパダール朝昼飲ませてるのに全く鎮静しねぇ。

ついには車椅子で廊下に出ようとしやがった。

「何しに行くんだよ。トイレか?クソか?おまえ自宅のトイレは無理だぞ。今日は16時半に看護師来て浣腸するから、クソすんな!」

父「わかった」

 

15時過ぎ、起きてきた母をなんとかガス抜きしたく、また散歩に誘う。 

手を繋ぎ歩きながら、

「さっき服抱えてどこか行こうとしたの覚えてる?」

母「えー覚えてない」

「手を繋いでても転びそうなのに、服を抱えて歩いたら危ないよ」

母「そうよねー」

父も母も、不穏スイッチ入った時の記憶がないんだよな。認知症はみんなそうかな??

 

帰宅すると父がまた車椅子で廊下に出てた。

ああああああああ~ガックリ∞

「おまえ、なんで廊下出てんだよ。16時半には看護師来るって言ったろ?クソすんなよ!他に廊下になんの用事があるんだよ」

父「いや、ちょっと‥」

「ちょっとじゃねぇよ!お母さんが服抱えて外に徘徊に出たの覚えてんだろ?」

父「覚えてる」 

「ああゆうのを防ぐために今、散歩に連れ出した。その間におめぇが室内徘徊してるってどんな了見だよ。今日はたまたま仕事入れてなかったけど、わたし1人でおまえらの徘徊転倒監視できねーんだよ!目も手も足りねぇ」

父「わかった」

車椅子からベッドにぶち込む。その10分後にまた車椅子に移乗し、廊下側に進む父。

リスパダール1ミリを朝昼飲んで、この多動っぷり! 

キーチーガーイー!!

こいつ何飲めば落ちつくの?または落ち着いてコレなの?気持ち悪いにも程がある。

 

 

看護師が帰宅後の17時。もう夕食を食べて寝たい母。

母「お腹空いたから、ご飯を…」

で、20時21時夜中に起きだすんだよな‥。

「晩御飯は18時過ぎ。なぜならあなたご飯食べたらすぐ寝るから。で、昨日も一昨日も夜中に彷徨いてた。あなたは今、脳梗塞の血をサラサラにする薬飲んでます。怪我したら死ぬよ?ましてパジャマで外出て転倒しても、身元わからないよ?」

母「あら、そんなことしないわよ」

「この2日しました。だから言ってます」

これだけ言っても5分経つと「そろそろご飯を‥」。エンドレス地獄。

 

なんとか18時過ぎに夕食を持ち越したが、まだ父が食べてる18時半、

母「お母さんもう眠くて眠くて。2階行くね」

「待て待て。せめて旦那が食い終わるまで待て。そして旦那の皿くらい洗え」

(わたしと母の皿はわたしが洗ってしまった。母は皿も洗えない〜汚水に潜らせ終わる〜ので本当は洗わせたくない)

母「でも眠いの!」

「1人で19時まで待てって言ってんじゃねぇんだよ。おまえの旦那が飯食ってんのくらい待てないのか」

繰り返し繰り返し言うほどに、わたしの言葉もきつくなる。

 

結局19時前に2階に行く。オムツを替えてると、

母「わたしの部屋は本当はここじゃないの」

「こんだけ自分のもので溢れてるのに?」

母「上の階にあるの」

「うちは1階2階建。夜中にありもしない階を探すのやめて」

母「違うの。この前はあったの」

「あのね、家の図面見せてもいいよ?でもあんた見たところでもう信じないんでしょ」

母「だってお母さん、3階がないなんて初めて聴いたもの」

40年暮らしてる2階建ての自宅に「3階ありませんよ」なんて言う機会がねぇんだよ。だが、認知症には通じない。

 

が、3階だの自分の部屋だのはただの象徴で、「自分の存在意義を感じられる本当の居場所」を妄想してるんだろうな。

でも、若かりし頃の充実した母はもういない。本人が1番認められないのはわかる。

わかるが、それを他人であるわたしが回収するのは無理。

 

で、階下に降りたら、また父がベッド脇に寄せたテーブルを蹴りフルチンになってた。

「オムツ履けや」

リハビリパンツを投げつけテーブルを戻す。

しばらくしてみたら、パンツの片足部分に腰を入れ、股間丸出しになってた。

ため息をつきながら父にパンツを履かす。ツライ。ツライぞコレ!

 

更に今、21時半。

案の定、母が自室から出てきた。

「どこ行くの?」

母「今、出てきたの」

「で、どこ行くの?階段暗いよ?あなた今、血液サラサラの薬飲んでるの。もし階段から落ちたら血が止まらないよ?」

母「え~そうなの?」

「そうそう。あなたわたしの大事なお母さんなんだから、そんな可哀相なことしたくないわけよ」

母「あら。ふふ、そうなの?」

はぁ…。

 

今夜、明日、明後日の14時半まで、無事に過ごしてショート突っ込めるかなぁ。

ショートで1週間過ごして、今の徘徊モードが解除される可能性はある。

が、このモードが継続したらどうすべきか…悩む。

 

父の特養入所が出来れば、

A施設なら「お父さんは施設に入ったよ。お母さんは月に数回お父さんに会いにお泊り行くんだよ」

B施設なら「お父さんは施設に入ったよ」

どちらの場合でも、とりあえずは「お父さんは施設だけど、お母さんはずっと家で暮らすんだよ」と伝える予定ではある。

母の性格上、たぶん「自分の安泰がわかれば、父のことは割とどうでもいい」気がするので。

が、現状は「1週間のお泊りだよ」と事実を言うのが良しと思ったんだけどな~。

 

今の母の状態を予測できてれば、

「じゃあ、まさに行く場所にご案内しまーす」

と、2人揃って有料という手もあったな。でもこのモードが数日で終わるパターンもあるし…。

認知症ってホントに先が読めない。